早稲田大学戸山キャンパスにて、吉増剛造×灰野敬二
題して「B線上の乱声−Voices on B-strings」。
吉増剛造ポエトリーリーディングははじめて聞いたのだが(もちろん早稲田で吉増さんが授業を持っていて授業の終わりにはポエトリーリディングをやっていることは知っていたが)、なんというか、ぶっちゃけいまいちだった。彼の詩集に収められている詩に比して、今回のために蓼科に四日間篭って作ったと彼自身が言っていた詩(これは原稿のコピーそのままを聴講者全員に配布)そのものにまずあまり関心がもてなかった。もちろん原稿用紙には言葉が散乱して置かれておりそこにシークエンスは存在しておらずどうにでも読めるので、ぼく自身の問題もあるのだろうが、やはり彼の実際あの場で表した詩というものそのものに、どうもいまいち感がぬぐえなかった。うまく言葉で言い表すことは出来なけれども。吉増さんなんかはきっと、守中隆明氏や平出隆氏にくらべて試作の出来不出来がはげしい、というか大きな波みたいなものがあるのではないかと勝手に思っているのだが、きっと今回は波が来ていなかったのだろうということにしておく。
しかし二人のパフォーミング自体は非常に興味深かった。終始灰野さんのペースで進んでいたように見えなくもなかったが、彼のパフォーマンスはいつ見ても非常に安定していてあまりぶれがない。デュオで灰野さんを見るのは去年の武蔵野美術大学芸術祭内企画「轟音教室vol.1」での灰野敬二×山崎マゾ以来だったが、あの時は二人の出す轟音のぶつかり合いという感じ。今回は彼のパーッカションソロビデオ「なにもかも」のような(というかあのビデオに使われていた楽器をよく使ってたけど)、ぐっとメリハリつけた感じで、ポエトリーリーディングというパフォーマンスとは非常に相性がよかったように思えた。吉増さんの声はあるときは轟音にかき消され、あるときは彼の声だけになるような感じで。
なかなかこういうパフォーマンスに対して感想を述べることは難しいけれど、とりあえず全体的によかったような気がする。気がするっていう保留付きだけれども、少なくとも楽しめた。


あと無料にしたいっていうのはわかるし授業の一環だからそれは当然であるのかもしれないけれど、そうすると客層が悪くなるというか、見ている側に緊張感が欠けるように思った。ああいう環境の中で携帯のバイブレーション音が聞こえてくるとか本当に最低だと思う。