トニー・ジャー主演の新作「トム・ヤン・クン」を見た。
「マッハ!」の時もそうだったが彼に付きまとう暗さや、ストイシズムのようなものはなんなのだろう。ブルース・リーと比較すると、確かに彼にはリーのような肉体的な強さ、武術の質を持ち合わせているが、彼には戦うべき相手はいないはずなのだ。
ブルース・リーはこう言っていた。「おかあさん、ぼくは東洋人だから、白人をすべて倒さなくてはならないのです。」
トニー・ジャーはなぜ戦うのだろう?ブルース・リーのストイシズムは間違いなくこの言葉から来るものである。ジョン・ウーが世界でもっとも敬愛している俳優「マイトガイ」こと小林旭は、明るくさわやかな青年ではあるが、自らの中の「悪」と相対化された悪との二つと戦うことであの軽やかだが泥臭い殺陣と共に人気を博した。トニー・ジャーが戦っているのは、映画の中で絶対化された悪である。彼が演技をし、悪を倒し続けるのはなぜだろう。
トニー・ジャーの今後に注目したい。